ひとりは、夜に鳴く夏の虫。
ひとりは、風に鳴る風鈴。
菅間さんが、いつものように、呼吸をととのえ静かにギターを弾き始めると、“ふたり”もその自然の音を奏で始め、やがて“さんにん”は、呼応し合うように、まるでトリオ演奏のような見事なアンサンブルを聴かせました。
(時折通る電車の音で“モダン”なカルテット演奏にもなります)
「8月に、この場所で、この曲を演奏出来るのは、少なくとも後1年はないだろうから、今日は、それを、弾きたいと思います」
そう言って、菅間さんは8月にちなんだ曲『One day,at twilight』を弾き始めました。
季節に1回のこの小さな演奏会は、その夜を終えると、また1年後にしか『夏』はやって来ません。
そんな当たり前の事がどこか物哀しく思えるのは、“さんにん”のアンサンブルがあまりにも見事だったから。
(時折のカルテットはちと“モダン”に過ぎます)
『秋』には『秋』の良さがあって、『冬』には『冬』の楽しみがある。
でもそこには、夏の虫の声も、風鈴の音も聴かれない。
それらは季節がもたらしたもので、それが過ぎれば、「また来年、お元気で」、となる。
そんな、季節がもたらしたもの。
“その夜の演奏会がまさにそうだったんだ”
と、今、iPadの画面を見ながら、思い返しています。
また来年。
店主
8月19日 菅間 一徳 ソロ演奏会 『夏』を終えて。
ゲストのひとり。短冊は手作りです。絵は大平高之 作。“チリンチリン”